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2017.06.21

こころMojiアーティスト 浦上秀樹さん 作家インタビュー

「漢字」の中に秘められた「ひらがな」のメッセージ。

2017年7月21日(金)より、G.Itoya2階で「こころMoji 展」を開催いたします。

会期:7月21日(金)~8月3日(木)
場所:G.Itoya2階 Write&Post

浦上秀樹さん実演開催【予定】
開催日:7月21日(金)、22日(土)、23日(日)、27日(木)、29日(土)、30日(日)、8月3日(木)
時間:1回目 13:00~ 2回目 14:30~ 3回目 16:00~


このたびの展示会にともない、こころMojiアーティスト・浦上秀樹さんにインタビューを行いました。
「こころMoji」との出会いから、制作について、これからのことなどをお聞きしました。

※「こころMoji」とは
漢字本来の持つ意味とは別に、自らの心を投影するコトバをひらがなにして漢字の中に入れ、
字にもう一つの意味を持たせたアート作品です。


浦上さんは、徐々に筋肉が衰える進行性の難病・遠位型ミオパチーを抱え、
動かなくなった手の代わりに口に筆をくわえて作品を生み出しているアーティストです

20170621G2階_1.JPG

■「こころMoji(文字)」をはじめたきっかけ。
浦上さんは、"絵の人"でしょうか、"ことばの人"でしょうか。

子供の頃から絵がとても好きでした。なので"絵の人"なのかもしれません。

ずっと理系だったこともあって、本はあまり読まず、30歳の時に初めてちゃんと読みました。
漫画の方が好きだったもので...
携帯のメールですら返信に困るくらい、文章を作るのが苦手だったのですが、30歳で本に出会い、
おもしろさを知って、そこから7年間でさまざまなジャンルを500冊くらい読みました。

特に最初に手にしたビジネス書がすごくおもしろくて、経済の本、株の本、金融の本も読みました。
当時は建築図面を作る仕事に就いていましたが、本の影響で株式投資も始めたほどです。
(実は、なかなかの才覚だったようです)

37歳(2010年)の時、漢字をひらがなで構成している人の本に出会いました。
その瞬間に、「これが自分のやりたかったことかな」と、ふと思ったのです。
それからというもの、本もほぼ処分し、株も解約して、文字を作ることに没頭しました。
まさか自分が文章を作るなんて、想像もしていませんでした。

■一番初めに描いた文字は何ですか。

「こころMoji」を描き始めようと思ったとき、なぜか、その2週間ほど前に、
スケッチブックと筆と墨を買っていたことに気がつきました。
買った理由は今もわからないのですが、外出先でスケッチブックが売っていて
、久しぶりに何か描いてみたくなったのか、たまたま買ったものなのです。
なので、思いたった時には筆と墨を使って、すぐに「こころMoji」を始めることができました。

昔から字がうまくはなかったので、初めて描いたときに、「自分は文字が書けるんだ!」と驚いたのを覚えています。

初めて描いた文字は「病」。
その中に、「のりこえろ」ということばを描いてみました。
なんとなく描いたものでしたが、すごく楽しいな、と思いました。
そのスケッチブックをしばらく自宅の本棚に立てかけていました。
けれど、それを見た人たちは、誰も何も言いません。言えませんでした。
後から聞くと、墨で書いた「病」という字、墨が水っぽく垂れてあまりにも悲しそうに見えたそうで、
このことには誰も触れられなかったようです。

そして、その文字の中に、ひらがなのことばが入っていることは、その時は誰も気が付きませんでした。
よく見てもらって、説明をして初めて気が付いてもらえました。

■その後、どのようにして、現在のように「こころMoji」の制作を進めていったのでしょうか。

「病」を描いた後は、現在のようには文字が思い浮かばなかったので、
「家族」「感謝」などの文字に、人の名前を入れてその人にプレゼントしたりすることを1年ほど続けました。

そのうちに、知人に自分の描いた文字を見せたいと思うようになり、描いた文字が「感謝」。
その中に「すべてのであいと いのちのすばらしさ」ということばを描きました。

「感謝」という漢字の中に入った意味は、本当は自分だけの楽しみで、
自分だけがわかっていれば良いものでした。
でも、周りの人に「なにが描かれているの?」とよく聞かれるようになり、その解説も書くようになりました。

文字に持たせた意味を文章にするのはすごく難しく、苦労しました。
解説にあたるものは、一番見られたくないものだったからです。
20170621G2階_2_2.JPG
『感謝』~すべてのであいといのちのすばらしさ~
「命」を「運ぶ」と書いて「運命」。
思ったとおりに事が運んだのがそもそもの不幸のはじまりだったということもあれば、
起こってほしくないと思っていたことが、実は自分の人生にとって一番必要な経験だったということもあります。
そう考えると経験というのはすべてが財産だということです。
出会いによって積みかさねられた経験に感謝をして生きていく。
それが「命を運ぶ」ということなのかもしれません。


■「虹」という文字について

作品製作を始めて2年目の6年前、まだ15作品ほどしかなかったのですが、
さいたま市で1ヶ月間展示会を行いました。
その帰りに、虹が出ていたんです。そのとき、「夢が叶っちゃったな」、と思って。
そこで、「虹」という文字に「ゆめいろ」という思いをこめた作品が出来上がりました。

「こころMoji」に色をのせたのは、2年ほど前のことです。
長野県で展示会を行うことになった時、テーマが花に決まりました。
墨の文字だけだと暗いイメージになってしまうので、その時初めて色をつけようと思い、
色をのせた作品作りを始めました。
20170621G2階_3_2.JPG
『虹』~ゆめいろ~
人は悩むほどに自分らしくなります。
悲しみは魂にとってのクスリ。
夢を持った瞬間、どんなにつらかった経験も必要な過去になります。
雨(涙)上がりの虹はきっと夢へとつながる架橋なのでしょう。


■どのように「こころMoji」を描いているのですか。制作過程を教えてください。
また、描きたい字は形から入るのでしょうか。

まずは描きたい漢字を決めます。
文字の形を見て、それをイメージしながら漢字の中のひらがなの意味を考えます。
それは瞬時に思いつくものから1年ほどかかるものもあります。
漢字の中にひらがなを当てはめようと、日常の中で気づくとつい、よさそうな漢字を探している時があります。
その中にひらがなを見てしまいます。
中華街は大変ですね。むしろ英語圏にいるほうが楽です。笑
(このインタビューは2017年5月11日 横浜・山下にて行いました)
それでもほとんどの描きたい文字やことばは、日常の生活のなか、お風呂のなか、布団のなかなど、
唯一ひとりでいるときにぱっと出てくるものです。
イメージできないものは、辞書で意味を調べて、イメージをふくらませます。
次に、漢字とひらがなの言葉を繋げる解説<こころ>を考えます。それから制作に取り掛かります。

たとえば「福」という文字の場合。
「ふつうのこと」という言葉がぱっと思い浮かびました。
書き出したりしなくても、頭の中で「たぶんこれだろうな」と浮かんだものを漢字にあてはめてみると、
ぴったり入るものなのです。
そこから、"なぜ「福」がふつうのことなのか"というところから、解説<こころ>を考えるのです。
自分で文字(漢字)の中の言葉(平仮名)を決めているようで、漢字が決めているようにも感じるし、
漢字が<こころ>(解説)教えてくれているようにも感じます。

描きたい文字は、形から入ることもあります。
はね・はらい のある文字が好きです。全部直線的に作られている文字はあまり面白みがなく、
少し丸みをつけて描いてみたりしています。

■制作の時間は1日のうちのいつですか。

日中です。

スタートはだいたい10時。そして18時くらいまでしか作業はしません。
お昼はほぼ休みません。お昼ごはんを食べてしまうと、消化しようとして心拍数が上がって、
筆先が鼓動で震えてしまいます。なので食事は摂らず、作品に集中します。空腹のときほど集中力が高まります。 

■使用している画材や道具へのこだわりを教えてください。

筆は細いもので、穂先3cm程度のものを使用します。墨汁は濃く、粘りのあるものが良いです。
色をつけるのは水彩絵具を使っています。メーカーは特に決めておらず、ホルベイン、クサカベなど、さまざま。

前回(2017年1月)伊東屋での展示会のときに買った、ドイツ製の1,900円もするターコイズブルーの絵の具が、
本当にいい色で気に入っています。
絵の具の1,900円ってすごく高いものですが、それが逆に興味があって買いました。とても濃くて、粘度が高い。
作品を見た人に、「ここのブルーがすごく好き」と言ってもらえるのも、
そのターコイズブルーの部分であることが多いです。(絵の具の発色は比例しますよね...)

青が好きなので、青い絵の具が好きです。青は楽しいですね。
「青」に注目して見ていただくのも、ひとつの鑑賞方法かもしれません。

20170621G2階_4.JPG

■制作にあたり"これがないとだめ"という環境や音はありますか。

音楽をかけることはよくあります。葉加瀬太郎などを聴きます。
「すごい集中力ですね」とよく言われますが、音は全部聞こえていて、話しかけられても全然平気です。
むしろ音楽や人の声がある方が描きやすいです。

昔はスキーやサーフィンをしていたので、サザンやチューブ、ユーミンも好きですね。
今聴いても当時を思い出します。
「海」という文字は、学生時代に茨城県の鹿島でサーフィンをしていた時に感じていたことを思って描きました。

■「こころMoji」を描く中で、苦労したこと、大変だったことを教えてください。

最初は、漢字の中のひらがなの言葉が思いつかなくて苦労していました。
今は、文字ができて、その中の言葉もできたのに、それを繋げる部分<こころ>が出てこない時が一番大変で辛いとき。
解説となる<こころ>を考え続け、考えても考えても1年以上出てこないものもあります。
<こころ>がなかなか出てこない、待機している文字がまだ頭の片隅に10文字以上はあります。
けれどそれは、今のタイミングじゃないんだな、出てきたときがそのタイミングなんだな、と思っています。

■浦上さんの、表現することへの原動力は。

やりたいと思って始めたのは自分ですが、今は、応援してくれる人、喜んでくれる人がいるから続けられています。
好きで文字を描いているだけなのに、それをいいと言ってくれる人がいることが不思議でたまらない。
けれどそれがすごく嬉しくて、ずっと書き続けたいと思っています。

年間12回くらい展示会をしていますが、それぞれの会場でいろいろな方に会うと、
そのあと、自分の気持ちが変わったりします。
 
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『飛』 ~えがくみらい~

自分に何ができるかということより、何がしたいか。
どう生きるか。
やってやれないことはない。
やらずにできるわけがない。
自分のなりたい姿を思い浮かべ、
今やるべきことを実践していくだけ。






















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『咲』 ~まっすぐ~

今やれることをただ淡々とやるだけ。
今、自分が置かれた場所があなたの居場所です。
前に進めないときは、下へ下へと根を伸ばす時。
根っこの深さは心の深さです。
やがて美しく、
大きな花(笑顔)を咲かせる日が訪れます。












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『風』 ~ゆめにむかって~

目標や夢を成し遂げる過程には
向かい風や追い風があらわれるが、
どちらも自分を成長させるには必要なもの。
いちばん大切なことは、夢を抱いた「きっかけ」という風。
その風をしっかり背中の帆で受け止め、
前に進む勇気を持つこと。









文字、言葉、意味、作品、色・・・
受け止める方にもたくさんの楽しみ方があるはず。
それぞれの文字の解説は私がつけているものですが、
見た人が自分なりの解釈をつけてくれればいいと思っています。

会場に来てくださるお客さまを見ていると、一つの作品の前でずっと立ち止まって動かなくなってしまう方もいます。
涙を流している方も。それは、自分の過去の何かに照らし合わせているのかもしれないし、
その人にしかわかりません。

私は好きなものを描いているだけなので、それを好きという人もいると思うし、興味のない人もいるはずです。
人それぞれだから、それでいいのです。

■今後描いてみようと思われるものを教えてください。

新しい文字も描きたいですが、今までに描いた文字でも、新しい気持ちで崩してみたいものもたくさんあるので、
同じ文字を形を変えて書いていきたいと思っています。それを並べたらおもしろいなと。
これからはそういったことに取り組んでいこうと思います。

■銀座・伊東屋 G.Itoya2階で7月21日(金)~8月3日(木)に開催される「こころMoji展」への思い。

まだテーマは決まっていませんが、現在ある340作品の中から選りすぐりを選んでお見せしたいと考えています。

会場で実演をいたします。「こころMoji」がどのように描かれているのか、
いらっしゃった方にその過程を見て楽しんでいただければと思います。
伊東屋の店頭で実演をするという、なかなかない環境なので、その緊張感を楽しみながら、
一筆一筆思いを込めて描きたいと思います。

■最後に、メッセージをお願いします。

「こころMoji」は、必要な人に、必要なタイミングで、必要な文字が届きます。
それがどうであれ、「こころMoji」が、皆さんにとって嬉しいものであったらいいなと常に願っています。
大切な人へのプレゼントや、自分自身に贈るメッセージとして、手にとっていただけたらなによりです。


浦上 秀樹 (うらかみ ひでき)
1973年2月埼玉県上尾市生まれ。春日部市在住。
21歳の時、筋肉が徐々に減少していく進行性の病気、遠位型ミオパチーを発症。
体のすべての感覚、動かしたいと思う意思はあるものの、腕や足などを動かす
筋肉を必要とする部分をほとんど動かせない状態となる。
2010年 口に筆をくわえて「こころMoji(自らの心を投影するコトバをひらがなにして
漢字の中にいれ、字にもう一つ意味を持たせたアート作品)」を始める。
「ことばのチカラ」としてブログを発信し、多くの反響を呼ぶ。
>ブログ「ことばのチカラ」 https://ameblo.jp/hideppe308/